島本和彦 『無謀キャプテン 2』 彩子

島本和彦 『無謀キャプテン 2』 彩子

作品データ

島本和彦 『無謀キャプテン 2』(1993年)
第2話『失い続ける男』

概要

 『逆境ナイン』に続く(舞台は同じ全力学園)「男の道三部作・第二弾」として登場した作品。主人公は“自らの意志で墓穴を掘る男”堀田戊傑(ほった・ぼけつ)。第1部が柔道編で、この第2部は宇宙人の侵略に対して超能力で戦うというダイナミックにもほどがある展開になる(笑。
 第1部のラストで、柔道部の助っ人として救援に失敗した責任が主人公の堀田一人に全て押しつけられ、学校での評判がどん底に落ちた状態で第2部は始まる。
 襲ってきた宇宙人を倒すと(唐突だがそうとしか言いようがないw)、その体内から意識を失った女子生徒が吐き出される。堀田の親友・人造人間ムウは彼女を敵とみなすが、堀田は彼女を庇って、二人は対立する。親友をも失った堀田に、舎弟(?)の突破孔は「堀田さんは損なクジばかりひいている」「何もかも失ってバカにされてくやしくないんですか」と叫ぶが堀田は無言。というところで問題のシーン。
 目を覚ました女生徒は、宇宙人に取り込まれていた間の記憶がなく、評判の悪い堀田が自分にいかがわしい真似をしたと誤解し、取り乱して釈明も聞かずに強烈なビンタを見舞って走り去る。

評価

衝撃度 (Impact): 80

 評判は地に落ち、学校中から後ろ指を指され、仲間を失い、新しくできた親友とも訣別し、それでも守り抜いた女子生徒。なんと彼女にまで誤解され罵倒されビンタされる。まさに堀田が全てを失った瞬間である。
 ちなみに彼女・彩子は後半でヒロインとして再登場するが、この時点では名も知らぬ初対面の女生徒。

表現力 (Expression): 80

 予備動作なしの一コマだが威力、スピード感ともに文句なしのビンタ。
 よく見ると堀田は血ヘドを吐いているし(笑)、頬には見事な手形が。
 また「けだものっ!!!」というのも、なかなかお目にかかれないセリフである。
 効果音はどうやら「バヂビンッ!!」と判読できる。当時の作品テンションを物語る異常な描き文字擬音の一つ。
 その直後の二コマの間、これも絶妙だ。

感情度 (Emotion): 85

 驚き、不審、疑惑と確信、悲しみ、怒り全ての感情が一連のアクションの中に表れる。
 それら感情のソースは全て誤解なのではあるが。

リアクション (Reaction): 95

 虚を突かれたのも一瞬、怒り泣き叫ぶ彼女に堀田もパニックするが、走り去る彼女に今は何を言っても無駄、と悟ると――ここからが素晴らしい。雨上がりの虹をバックにたっぷりと間を取ってから、「ようし ラーメンでも食って帰るかあ突破っ!!」
 全て振り切って学校帰りのラーメン屋で物凄い勢いで麺を啜る。「うまい!!」というその顔に、汗とそして涙が流れるのだった。
 余談だがビンタの後は男同士でラーメン、という流れは『イリヤの空、UFOの夏』とも通じているのが興味深い。

破局度 (Catastrophe): 75

 初対面で、助けた相手から、絶交クラスの拒否反応を叩きつけられる。まさしく破滅的。
 次に会った時は、ムーを介して事情が通じ、もう誤解が解けていて堀田は彩子の謝罪を受け入れて和解が成立。それもかなり後になってのことなので、すでにほとぼりが冷めていた感もある。