作品データ
TVアニメ『つうかあ』(2017年)
http://twocartv.jp/
第5話『Reverse Grid』
監督: 田村正文
脚本: 高山カツヒコ
絵コンテ: 田村正文
演出: 田村正文
作画監督: 古谷梨絵
概要
2人乗りのレーシングサイドカーによる女子レース競技を描くアニメ。
レーシングニーラーにはステアリングがないので、ドライバーの担当するアクセルブレーキとサイドカー上のパッセンジャーによる体重移動のバランスで曲がる。ドライバーとパッセンジャー両者の信頼関係が命なので、自ずと各チームの百合展開みたいな流れになる。
Sっ気のあるドライバー村田いずみと、Mっ気のあるパッセンジャー鈴木なぎさは、筑波女子高等学校のペア。なぎさはいずみに奴隷のようにこき使われているが、不満をもらす事なく素直に従っていた。しかしこの二人の間にも何か距離感があるようで、別々の宿に泊まっていた。ある夜なぎさは、不思議な夢を見る。それは、自分といずみの立場が入れ替わった夢だった。
いつもギリギリのラインを攻めるドライバー村田いずみ。激しい走りに必死についていく鈴木なぎさ。二人の主従関係はドライビング中も同じである。いずみとなぎさは、幼稚園から小中高ずっと同じクラスで、ずっとなぎさはいずみの子分だった。そんななぎさの心境のゆらぎに、敏感に気付くいずみ。そしていずみ自身も、自分の心境の変化に気付き、戸惑いはじめる。
いずみの「子分」を自認するなぎさだが、4話冒頭では立場逆転して自分が女王様になっていずみをメイドとしてかしずかせる夢をみる。その微妙な心理的影響を感じたいずみは、地元三宅女子のチームとパートナーを交換して走るスワッピングを提案。ところがなぎさが別のドライバーとの走りを楽しんでいたのが気に入らないいずみはいきなりビンタして「なぎさ、私たち別れましょう」「もう口も聞きたくないわ」と言い放つ。
続いて5話冒頭では今度はそのいずみが立場逆転した女王様&メイドの夢をみる。いずみのあまりにも理不尽な仕打ちに、周囲はなぎさに「ガツンと言ってやれ」とけしかけるが、結局なぎさがいずみに謝って元の鞘に収まるのだった。
その後のタイムアタックでは、コース上に居た烏をなぎさが咄嗟の判断で避けてコースアウト。ショックで放心状態のいずみを、なぎさがヘルメットの上から叩いて正気づかせる。夢にまで見た(笑)下克上ビンタが意外なシチュエーションで実現。
ドライバーである自分の命もパッセンジャーのなぎさに握られていることを初めて実感したいずみは恐怖を覚えるが、なぎさは逆に自信を持って限界ギリギリまで攻める体勢を取る。その状態でスピードを緩めるとオーバーステアで曲がりきれないため、いずみはなぎさの要求に応えてアクセルを踏み込まざるをえない。いずみが自分のことを思って怖がっているのを感じ取ったなぎさは喜びに震えるのだった。
自他共に認める主従の二人が、絶対の信頼関係が問われるレース中の極限状況で初めて力関係が逆転する瞬間を意識するという倒錯ぶりが素晴らしい。
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