2022年のアカデミー賞授賞式でウィル・スミスが司会のクリス・ロックを壇上で平手打ちした件(BBCの記事)について、スミスの妻ジェイダ・ピンケットが語った記事で「聖なるビンタ」というパワーワードが登場。
‘I nearly didn’t even attend the Oscars that year, but I’m glad I did,’ says Pinkett Smith. ‘I call it the “holy slap” now because so many positive things came after it.’
実はこの事件の何年も前から夫婦は別居状態だったみたいな話もありましたが、事件をきっかけに夫婦の関係が改善されたというイイ話に……。
この件、そもそもなんでウィル・スミスが怒ったのかというと、クリス・ロックがジェイダの短髪を見て『G.I.ジェーン』(デミ・ムーアが坊主頭で主演)をネタにしたジョークを言うたんですね。ところがジェイダが髪を刈ってたのは脱毛症が原因なので、これをネタにするには完全にアウトだろってことでウィルはキレた。
個人的にはウィル・スミスの怒りはもっともだと思うし、カミさんを公然と侮辱されたんだから相手をキッチリとカタにはめるのは当たり前、と思ってしまう。だから暴力も許されるべき、というのではない。「許されなくてもやるべきことがある」という意味だ。実際、ウィル・スミスはこの件でアカデミー賞関連の公式行事から10年間追放という処分を受けている。重い処分を受けるであろうことは十分承知の上でそれでもやるべきことをやったわけだ。彼は男を上げた、と俺は思う。でもアメリカ人はそんな考え方をしないので、「自分の感情を制御できずに暴力行為に及んだのはあかん」てなるのね。実際そうなのかもしれないし。
2006年のサッカーワールドカップ決勝で、フランス代表のジダンが相手選手に頭突きして一発退場になった事件があった。ちなみに大会後に引退したジダンの現役最後のプレーがこれ。理由はいわゆるトラッシュトークで「大切な家族を侮辱されたから」だという。
島本和彦先生がこれを見て、「世界最高のサッカー選手が、その最大最後の晴れ舞台で、サッカーよりも大事なことのために退場処分になる。これはすごいドラマだ」という意味のことを言っていて、さすがは『レッドカード』というサッカーマンガを描いた島本先生だ、と私はいたく感銘を受けた。
ウィル・スミスの件にもこれに通じるものを感じたわけです。ビンタ関係ない話になっちゃったね。
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