『ソードアート・オンライン』 #08 アスナ

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
『ソードアート・オンライン』 #08 アスナ 『ソードアート・オンライン』 #08 アスナ 『ソードアート・オンライン』 #08 アスナ

作品データ

TVアニメ『ソードアート・オンライン』(2012年)
http://www.swordart-online.net/
#8 『黒と白の剣舞』
原作: 川原礫(電撃文庫刊)
監督: 伊藤智彦
脚本: 入山修司
絵コンテ: 岡村天斎
演出: 藤井辰己
作画監督: 米山 舞

概要

 脳神経を直接接続して五感全てでアクセスするVRMMORPG(仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム)『ソードアート・オンライン』のプレーヤーが、開発者によってログアウト不可・ゲーム内で死ぬとプレーヤー本人も現実に死ぬというルールでプレーし続けることを余儀なくされている、という話。
 主人公キリトはパーティーを組まずに攻略の最前線で戦うソロプレーヤー。最大手ギルドの上級幹部であるヒロインのアスナは、部下のギルドメンバーを率いて攻略の指揮をとるが、キリトに会うため部下の護衛を捲こうとして、魔法のアイテム「転移結晶」を使用して待ち合わせ場所に瞬間移動してくる。転移ゲートに飛び込んだためそのままの勢いで転移先に飛び出したアスナはちょうどキリト君の頭上から覆い被さるように倒れ、偶然にもアスナの胸に手が触れた体勢になったキリトは「柔らかく弾力に富んだそれの正体を探るべく、二度、三度と力を込め」た(原作小説より)。
 メジャー作品らしい、直球ド真ん中のラッキースケベである(笑。

評価

衝撃度 (Impact): 40

 様式美ともいえる一連の展開で驚きは全くない。

表現力 (Expression): 70

 ご丁寧に三度も胸を揉まれたアスナさんは絶叫して平手打ち。
 最前線攻略組だけに膝を着いた姿勢からの打撃でキリト君を推定10メートルほども吹き飛ばす威力。平手の鋭い響きかつ重い打撃音にもなっているSEも聞き逃せない。
 なお、町の中なのでノックバックは発生してキリト君は吹っ飛ばされるものの、システム上ライフへのダメージはない(笑。

感情度 (Emotion): 75

 むしろアスナのほうが悪いと思われる経緯なので、逆ギレというか感情以外の理由はないのだが、涙目になってキッと睨みつける表情はまるで100%被害者であるかのようだ。

リアクション (Reaction): 50

 胸元をかばうアスナの仕草を見てようやく何を触っていたか気づき右手をニギニギするのだが、テンポがイマイチ。キリト君のリアクション芸は微妙である。

破局度 (Catastrophe): 45

 その時、追っ手である部下が転移してきて、アスナはたった今ぶっ飛ばしたキリト君の背に身を隠すのだった。切り替え早すぎだろ!

『じょしらく』 第三席 空琉美遊亭丸京VS蕪羅亭魔梨威

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
『じょしらく』 第三席 空琉美遊亭丸京VS蕪羅亭魔梨威 『じょしらく』 第三席 空琉美遊亭丸京VS蕪羅亭魔梨威 『じょしらく』 第三席 空琉美遊亭丸京VS蕪羅亭魔梨威

作品データ

TVアニメ『じょしらく』(2012年)
http://www.starchild.co.jp/special/joshiraku/
第三席『「無情風呂」「浅草参り」「真田小ZOO」』
原作: 久米田康治/ヤス(講談社「別冊少年マガジン」連載)
監督: 水島努
脚本: 横手美智子
絵コンテ: 池端隆史
演出: 池端隆史
総作画監督: 大木良一
作画監督: 新垣一成、冨岡寛

概要

 女子落語家の話、ではあるが、主に寄席の楽屋でメインキャラの女性噺家が雑談するだけで、高座のシーンは各話冒頭でサゲの部分を演じるのを一瞬見せるだけという、ほとんど落語には関係ない内容。あとは各話サブタイトルが古典の演題の捩りというくらいです。冒頭に「このアニメは女の子のかわいさをお楽しみいただくため、邪魔にならない程度の差し障りのない会話をお楽しみいただく番組です」という注意(?)が出る。
 第3話の3本目、「真田小ZOO」のタイトルが表示されて僅か数秒後の出来事。
 ちなみにこの回でOPにもフィーチャーされている"Choo Choo Train"のダンスをやってるから真田小"ZOO"なんですね。「真田小僧」には全く関係ないけど(笑。
 空琉美遊亭丸京(読みは「くうるびゆうてい・がんきょう」。クールビューティー眼鏡と言いたいわけです)が「あーかゆい」と身体を掻いていると、蕪羅亭魔梨威(ぶらてい・まりい)が背後から「なんだい、インキンかい?」とからかう。丸京は即座に振り向きざまのビンタ。
 マリーさんも即「何すんだよいきなり!?」と逆ギレするが、丸京は手の平を見せて「蚊。」と一言。「誰か窓を開けっ放しにしてたから――」と言いかけたところに蚊の羽音が聞こえて、思わず目で追う二人。丸京の左手の甲に留まった蚊をすかさずマリーさんが平手で叩く! 「痛!」と左手を押さえる丸京に、「蚊。」と手の平を見せて勝ち誇る(?)マリー。 ムッとして右手を上げる丸京にマリーもガードを上げて構えるが、すかさず左手でもう一発入れる丸京。「フッ」「フェイントだと……?」
 二人はファイティングポーズを取って全面対決の構えだが、『これは……先に動いたほうがやられる……!』とにらみ合っているうちに双方とも蚊に刺されまくって痛み分けに終わるのだった。

評価

衝撃度 (Impact): 65

 スイカが爆発する結末から「なぜこうなった」という導入で回想の本編が始まり、5秒もたたないうちにビンタが炸裂。マリーの最初の一言に対して即ビンタというその唐突さが衝撃的。

表現力 (Expression): 80

 真後ろに立ったマリーに対して、全身で振り向いた勢いのままフルスイングのビンタがクリーンヒット。左手がほぼ360度一回転の軌道を描く。打たれたマリーの顔が歪み、首が捻れて吹き飛ばされる動きも、あくまでコミカルな表現ですが見事なアクションです。
 一部始終をフィックスで捉えているのもポイント。

感情度 (Emotion): 55

 明らかにマリーの茶化しに反応して叩いているが「蚊がいたので叩いた」という体で悪びれず手を見せる。蚊を叩くというよくあるギャグのようでもあり、ほとんど見もしないで振り向きざまに叩いているし、単にからかわれたのに対し手が出たのだとすると沸点が低すぎるようだが蚊を言い逃れに持ち出すところはクレバーで、クールなんだかどうなのかよくわからない(笑。というギャグなのだろうか。
 やり返すマリーさんは律儀に蚊の留まった手の甲を叩いているので丸京へのダメージは少ない。しかもさらにもう一度やり返され、右手をガードしようとしたところフェイントで左手をもう一発もらってしまう。蚊を叩くのになんでフェイントなんだ(笑。

リアクション (Reaction): 70

 派手に首を捻って吹っ飛ばされながら「あべし!」と(?)呻くも一瞬で体勢を戻して「何すんだよいきなり!?」とキレる。その切り返しの早さと、自分の品がないセリフを棚に上げた逆ギレっぷりが見どころ。

破局度 (Catastrophe): 15

 話はこの後、一人だけ蚊に刺されていない防波亭手寅の天然の危機回避能力が高い、という流れに展開するので実は二人の喧嘩は前フリですらなくこれっきりなのだった。
 ちなみに、次の回では丸京はマリーをグーで殴っている(笑。

『TARI TARI』 第2話 沖田紗羽

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
『TARI TARI』 第2話 沖田紗羽 『TARI TARI』 第2話 沖田紗羽 『TARI TARI』 第2話 沖田紗羽

作品データ

TVアニメ『TARI TARI』(2012年)
http://taritari.jp/
第2話『集ったり あがいたり』
監督: 橋本昌和
脚本: 橋本昌和
絵コンテ: 安斎剛文
演出: 平田豊
作画監督: 佐々木睦美

概要

 ※ 本来は顔面への打撃以外は(キリがないので)対象外ですが、あまりにも見事だったので番外として紹介。

 一応、音楽がメインの部活もの(?)だが、ストーリーは独特のテンポで進行。主人公の一人、来夏が合唱部を結成して発表会に臨む第2話で早くも一つのクライマックスを迎える。
 声楽部に所属していた来夏は、前年度の発表会でやらかして以来干されて伴奏ピアノの譜めくりしかさせてもらえない。歌わせてくれるよう顧問の教頭先生に直訴するも、「音楽で人の心を動かすには特別な何かが必要」という主義の教頭に「ステージで歌うのは諦めなさい」と宣告され、「じゃあ辞めます!」と啖呵を切る。
 無所属になった来夏は親友の紗羽、音楽科から転科してきた和奏(名義のみ)、弟の友達らをかき集めて「合唱部」の創部申請を提出、校長は思惑あって顧問を引き受ける。
 発表会当日、校長が行方不明のため「顧問の引率なく校外での部活動は禁止」という校則により合唱部は会場入りできない。産休中の副顧問にも連絡がつかず、リハーサルは唯一楽譜が読める和奏が急遽対応。なんと交通事故で救急搬送されていた校長を病院で捕まえ、残り部員はようやく学校を出発する。教頭に頭を下げて出場順を声楽部と入れ替え最後にしてもらった合唱部だが、来夏と紗羽が病院からギリギリで会場入りすると、他の部員達は渋滞で間に合っていないことが判明するのだった。
 これを見た教頭は「中止を伝えてきます」と宣言。怒濤のトラブルに心が折れた来夏は「……もう帰る」と呟く。それを聞いた紗羽は来夏の尻に怒りのスパンク。「あんた、これだけの人巻き込んどいて何もしないで帰る気? 悔いはないの!? もう次はないんだよ!」と発破をかける。これで開き直った来夏は紗羽と二人、ステージに立つのでした。

評価

衝撃度 (Impact): 75

 来夏が俯いて「もう帰る」と言うところから一歩前に出て腕を振り上げるところまでワンカットでほとんど間がなく、紗羽の果断な動きが光る。来夏は全く気づいていない。

表現力 (Expression): 80

 さすが弓道部で鍛えているだけに(?)実にパワフル。体格差もあり、跳び上がった来夏の身体がまるで平手の威力で浮き上がったように見える。振り上げた腕を溜めて一気に振り下ろす動き、バックスイングで静かに息を吸ってインパクトで鋭く吐く呼吸も弓道に通じるものがあるのか(笑。
 スカートの上からで逆になのか、ものすごい打撃音が出ているのもポイント。

感情度 (Emotion): 70

 ただの怒りではなく、叱るべきところで叱る対応はさすが親友、そして寺の娘ならではというのは深読みしすぎか。叩いたあと仁王立ちで大喝するさまは男前すぎます。

リアクション (Reaction): 80

 全く無警戒のところに背後からの打撃で、変な声をあげ文字通り跳び上がって両手で尻を押さえ前屈みに。
 その姿勢でじっと瞑目して紗羽の説教を聞き、目を開いて直立姿勢に戻るアクションが心の動きと一致しているわけです。「歌ってナンボだ、恥かいたっていい、行けるとこまで行こう!」
 見届け人としてその場に和奏がいるのも心憎いシーンです。

破局度 (Catastrophe): 0

 でも尻はしばらく痛そう。

『謎の彼女X』 第11話 卜部美琴&早川愛香

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
『謎の彼女X』 第11話 卜部美琴&早川愛香 『謎の彼女X』 第11話 卜部美琴&早川愛香 『謎の彼女X』 第11話 卜部美琴&早川愛香 『謎の彼女X』 第33話 5巻 122ページ

作品データ

TVアニメ『謎の彼女X』(2012年)
http://www.starchild.co.jp/special/nazokano_x/
第11話『謎の文化祭』
原作: 植芝理一(講談社「月刊アフタヌーン」連載)
監督: 渡辺歩
脚本: 赤尾でこ
絵コンテ: 誌村宏明
演出: 中智仁
作画監督: 坂本千代子

概要

 作品紹介は前回参照。
 中学時代にずっと片想いしていた女の子、早川と街中で再会した椿くん、会話の中でつい「彼女はいない」と嘘を吐いてしまい、最近彼氏にフられたという早川を慰める(≒口説く)ようなことを言い募って泣かせてしまう。しかも、泣き顔の早川が涎を垂らしているのを見て動揺した椿くんは、「これからも時々二人で会って話したいな」という早川に「早川が涎を舐めさせてくれたら……」と口走る。
 もう少しで早川の涎を舐めそうになる椿くんだが、「涎は私たちの絆」という卜部の言葉がフラッシュバックして我に返り、やはり舐められないと謝る。「やっぱり彼女がいるんでしょ」とバレる。成り行きとはいえここまでは椿が悪い。
 しかしここからが早川の恐ろしさ。椿から聞き出した名前を頼りに卜部に接触、自校の文化祭に来るよう誘います。「なぜならその日、椿くんも来ることになるからです。あなたにとっても面白いものが見られると思いますよ!」と、この時点で完全に宣戦布告モード。ちなみに、第1話で椿くんが卜部に告白した際に見せたのが、「いつも財布に入れていた、中学で好きだった女の子=早川の写真を破って捨てる」というパフォーマンス。その写真を見覚えていた卜部は一目で早川の素性を察知します。
 一方、早川は続いて椿に再度接触、「よりを戻そうとした元彼に嫌だと言ったら殴られた」とウソを吐いて、「文化祭で一日だけ彼氏のフリをしてほしい」というベタな話を持ちかけます。新しい彼氏がいるのを見せれば諦めるだろう、と。絆創膏に特殊メイク(笑)で偽のアザまで作って見せ、「他に相談できる人がいない」などと言えば話の流れ上、極めて断りづらい。しかも卜部には秘密にせざるをえない。まさに早川の思うツボにはまるわけです。文化祭の日の予定を探る卜部に、椿くんは「上野と遊びに出かける」とウソを吐くが、上野とつきあっている丘の話と食い違って嘘は決定的にばれる。
 そして波乱の文化祭当日。参加者がコスプレする趣向の文化祭で、早川は中学の制服に当時と同じ長髪のウィッグを着け、椿くんを空き教室へ連れ込んで中学の放課後のシチュエーションを完全再現して迫るのだった。「もし椿くんが本当に彼氏になってくれるのなら、私はまたあの頃みたいに髪を伸ばすわ」「でも言っただろ、彼女がいるって」「今の彼女、卜部さんを選ぶか私を選ぶかは、ちゃんと私のも舐めてから決めてほしい」 いやいや既につき合ってるんだからその理屈は通らないだろ。覗き見していた丘が止めようとしたところに、段ボールで作ったロボットのコスプレをした卜部が満を持して登場する。
 卜部は早川と決着をつけるための勝負を提案。椿に目隠しをして、順番に涎を舐めさせ、甘かったほうの勝ち、というルールです(涎の絆がある関係だと甘く感じるというのが基本設定)。ところが、先攻の卜部が涎を舐めさせた時点で、その激甘な味に椿くんは鼻血を噴き出し、「こんなの目隠しの意味ない」「今の卜部だろ!」と断定。あっけなく勝負が着きます。
 「お前、段ボールの下……!?」という椿くんの言葉に応じて卜部は得意のハサミ捌きで内側から段ボールをバラバラに切り刻み、その下から全裸で登場。「これが、私と椿くんの涎による絆!」とドヤ顔で言い放ちます。何もできずに負けた形の早川は引き下がれず、「もしあなたと椿くんにも絆があるなら、同じようにすれば椿くんに鼻血を出させることができるはず」という卜部の挑戦に応じて自分も服を脱いで全裸に。

評価

衝撃度 (Impact): 120

 文化祭開催中の学校の教室で、今の彼女と昔好きだった女の子の全裸を間近に目撃して、二人から同時にビンタされる、という夢の(笑)シチュエーション。
 こう書いてみると一体どうしてこうなったという異常極まる状況なのだが、この作品においては無理のない展開でここまで持ってきているのが凄い。「全裸で涎を舐めさせる」のはシリーズ初期、このアニメでは第2話で卜部が既にやっているし、それが伝わって興奮で鼻血が出るのも実証済み。ついでに前述の通り早川も第1話に写真で登場している(原作のこの時点で再登場の展開を考えていたわけではないだろうけど)。
 恐るべきはこの展開を成り立たせてしまう作品世界の構築だろう。まさしくこの作品でしか実現しえないシーン。

表現力 (Expression): 70

 問題はここである。
 卜部と早川は椿くんの目隠しが外れたことにすぐに気づかず、丘に指摘され、――ここからのカット割は、1.赤面する卜部 → 2.悲鳴を上げる早川 → 3.卜部のビンタ(SE) → 4.早川のビンタ(SE) → 5.椿くんの正面、二人の背後からのショット(SE) → 6.切り返して二人の正面、倒れる椿くんの背後から、となっている。
 さて、原作ではこのシーン、1.と2.に相当するコマの次に見開きで5.の画(上の画像)が来て、3.と4.にあたる絵はないのである。つまりビンタの瞬間は見開き1枚で表現されており、丘の言うところの「二撃」はほぼ同時にヒットしたのだろう、というのが私の理解でした。
 絵から見てとれるように卜部が左腕をスイングして椿くんの右頬を、早川が右腕で左頬を打ったとすると、二人の腕が描く軌道は重なっていて、同時に振り抜くのは現実的には不可能でしょう。しかし、だからこそ! アニメーションなら現実には不可能な動きも描写できるはず、と大いに期待していたのです。右からのビンタと左からのビンタ、二人の腕がフルスイングでクロスして両側がら同時にヒットする、という、いわば「翼くんと岬くんのツインシュート」のような、現実には決してありえない故に究極の、アニメならではのクロスビンタ描写が可能かもしれない、と。
 ところが実際には、卜部のビンタ→早川のビンタ、とシリアルにカットを繋ぐことによって逆に、時間差を強調するような演出になってしまっている。まず卜部の右側に椿くんの顔が流れるカット、次に反対向きに早川の左に椿の顔、と三者の位置関係の矛盾を無視するような編集になっているところはなるほどアニメならではといえなくもないけど、期待してたのはこういうのじゃないんだよなあ。
 それに、打撃音のSEが都合「三回」鳴っているのも解釈が難しいところです。よくある「衝撃の瞬間を三回繰り返す」演出のフェイクっぽい処理ですが、卜部で一回、早川で一回、そして3人が収まった画面で一回、という構成は何を意味するのか? アクロバティックに解釈すると、最初の二つは時間軸上はほぼ同じ瞬間を二つの方向から捉えた、そして改めてその瞬間の全体像を見せたのが三回目のSEが鳴った画面、だとすると三回のSEのタイミングは時系列上は全て「同じ一瞬」であり、同時にヒットしたダブルビンタを卜部サイド→早川サイド→全体、とまさに三回繰り返しで見せた演出なのではないか。
 しかしこれはあくまで「三度繰り返す」という映像文法を前提に理詰めで解釈した場合であって、観た印象として同時であるように見えていなければ効果がない。やはり、「卜部の腕と早川の腕がスイングして同時にヒットする」部分は1カットで動きを描き切ってほしかった。
 さて、ここまで「同時」ということにこだわってきたが、原作の描写(=上掲画像)を再度解釈してみると実は微妙である。見ての通り、見開きの両サイドに「パンッ」「パンッ」という描き文字の擬音が二つ並んでいる。絵としては同時にしか見えないのだが、「音」は時間差を表現しているとも考えられる。同時であれば音は重なって一つと描くか、もっと具体的に微妙なタイミングのズレを「パパンッ」という風に表現するのではなかろうか。
 その前提で絵を改めて見ると、椿くんの顔が(以下本人から見て)右を向いているのは、先に卜部のビンタが右からヒットして首が左を向き、次に早川のビンタがカウンター気味に左から入って首が右を向いた、その瞬間が描かれているという解釈は可能である。卜部、早川という順番はアニメの描写と矛盾しないし、反応の早さと身体能力の差で卜部のが先に当たるのも自然である。さらにいえばマンガの基本文法として右から左に時間が流れる原則を見開きにも適用する上で、右に卜部、左に早川という位置関係で描いたのも技法上の理由と考えられなくもない。
 以上、タイミングの問題は解釈次第として個人的な趣味に合わなかっただけだとしても、肝心のビンタが3カットとも止め絵のみで、左右のパンなどで動きの表現は付けているものの、やはりアニメーションそのものの快楽という点において高い評価は与えられない。
 ただ、見逃せないのは直後の二人の全身を正面から描いている画で、フルスイングした後の体勢と、身を捩って身体を隠そうとする仕草が融合した絶妙の姿勢になっている。これは原作通り。
 また一方で椿くんの両頬にクッキリと赤く手形の跡がつき、しかも光っているような表現になっているのも古典的でよろしい。

感情度 (Emotion): 75

 状況は特殊だが、裸を見られてキャー!! という流れ自体はラッキースケベの王道そのものであり好感が持てる。ここは卜部が目を見開いて赤面からの、早川の悲鳴、と、両者の自然なリアクションをこの順番で見せることで、ごく短い尺の中でクライマックスへテンションが急上昇する流れを作っていて見事。
 卜部が素で動揺を見せた度合いでも作中屈指のシーンです。

リアクション (Reaction): 70

 気絶して後ろにぶっ倒れるというある意味豪快なリアクション。
 丘いわく「でもなんか、顔すっごく嬉しそう……」。気絶する前、既に打たれた瞬間の口元が笑っています。しかも、目隠しが外れてから丘がツッコむまでの間は椿くんは二人の裸をじっくり見ているわけですが、その時点では呆然とした表情で決して笑ってはいない。つまり笑ったのはその後、少なくとも裸を見られた二人のリアクションを見てからだと考えると、椿くんもなかなか業の深い男と評価せざるをえない。また、打撃SEに反応していちいち声を出すんですが、その声がなんか気持ちよさそうに聞こえるのもポイント(笑。

破局度 (Catastrophe): 55

 これは評価が難しいところ。そもそも物語上の決着は、早川が無意識に拒絶の涙を流して気持ちを自覚してしまったところで決定的についており、ビンタは単なるオチです。
 しかし一面、ビンタで気を失った椿くんはそれを最後に以後早川と顔を合わせておらず、この二人の間では象徴的にビンタが決定的な訣別になったともいえる。
 原作では椿くんの意識が戻ると早川の姿はなく、服を着た卜部に「おれ、卜部と早川の裸を…」と言いかけてじろっと睨まれるシーンがある。この話題はタブーとなったようで評価の対象になりうるのだがアニメではカットされた。また、窓から外を見ている早川が、帰って行く椿と卜部の後ろ姿を見送る描写も原作にしかない。ここは出来れば拾って欲しかった。さらに余談だが原作でもその後今に至るまで早川の再登場はない。

『黄昏乙女×アムネジア』 十ノ怪 庚紫子VS庚夕子

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
『黄昏乙女×アムネジア』 十ノ怪 庚紫子VS庚夕子 『黄昏乙女×アムネジア』 十ノ怪 庚紫子VS庚夕子 『黄昏乙女×アムネジア』 十ノ怪 庚紫子VS庚夕子

作品データ

TVアニメ『黄昏乙女×アムネジア』(2012年)
http://www.amnesia-tv.com/
十ノ怪 『喪失乙女』
監督: 大沼 心
脚本: 高山カツヒコ
絵コンテ: 佐山聖子
演出: 永岡智佳
作画監督: 松下郁子、木下ゆうき

概要

 60年前に死んだ女生徒の幽霊で、学校の怪談にもなっている「夕子さん」がヒロインのホラーラブコメ(?)。
 夕子さんは、霊感体質(?)かまたは夕子さんの存在を「意識した」人にしか姿が見えないが、それ以外は普通の人間同様に、触れることもできる。そして「もう死んでるから」とか「幽霊なのに」といった葛藤が一切なく主人公である新谷貞一と夕子さんが普通に相思相愛になるところが現代的(笑。 余談ですが主人公の貞一くんは中一、夕子さんは享年15の中三と、中学生だったことを今初めて知りました。ずっと高校生だと思っていた……。
 生前の記憶がなく、いつも天真爛漫な夕子さんだが、実は自分の死に関する記憶や、怨みや怒り悲しみなどのネガティブな記憶・感情を自分から切り離していたことが明らかになる。その切り捨てられた感情が実体化したのが悪霊「影夕子」。いわばもう一人の夕子さんです。
 影夕子に接触した貞一は、彼女の中の、夕子さんの生前の記憶を追体験します。当時の夕子さんと感覚を共有した貞一の一人称視点で展開するのがこの第10話。
 60年前、疫病が流行して病死者が続出している村で、夕子さんと妹の紫子は、村の大人たちが人柱を立てる相談をしているのを聞いてしまう。帰宅後、姉妹一緒に風呂に入っている時にそのことについて口論に。

評価

衝撃度 (Impact): 85

 姉妹で入浴、向かいあって湯船に浸かりながら、些細な口論からまず妹が姉に下克上ビンタ。姉も言い返しながら即座に反撃のビンタを返し、頬を押さえて風呂から飛び出す妹。シチュエーションとしては文句なしです。
 そもそもこの年頃の姉妹が一緒に入浴してるって、原作マンガの性質上サービスの一環なんでしょうけど(笑)、ちょっとただならぬ関係を思わせますよね。

表現力 (Expression): 80

 まず、貞一くんの意識が夕子さんの感覚を共有してその記憶を追体験している体なので、常に夕子さん視点の映像で展開するのがポイント。ビンタの応酬を終始同一視点から描写したのはレアケースでしょう。
 紫子のビンタは、夕子さんの左手を掴んだのを振り払われた、その中途半端な位置からノーモーション気味にスイングしているため、奇襲効果は高いもののそれほど威力はなさそうに見える。後述する貞一のリアクション芸(笑)で下駄を履かされている感はあります。
 続く夕子さんの反撃は相手の語尾にかぶせるように当てておりタイミングはバッチリ。ただ胸まで湯に浸かった体勢のため、スイングは大きいですが腕の力だけで打った感じです。視点も左右に少しブレる程度。
 ただ二人ともなかなかいい音をさせており、姉妹してビンタ慣れを感じさせます。

感情度 (Emotion): 55

 人柱を「何とかしてやめさせないと」と言う夕子さんに、紫子は「いけません! そんなことをして、姉様に何かあったら――」とその身を案じて制止しようとする。それに対し「構わないわ! 私だけ助かろうなんて思ってないわ」と先にキレ気味に返す夕子さん。そこでいきなり紫子のビンタ。
 夕子さんは、科学の時代に人柱なんて迷信、とごく真っ当な意見です。「何とかして」というのも別に強硬手段とはまだ言ってないわけで、紫子の反応はやや過剰に見える。密談する村の大人たちの殺気立った様子を見て危機感を持っていると解釈するにしても、自分だけ助かろうなんて思わない、という夕子さんの返事も飛躍しすぎです。ここは会話の流れがうまく繋がっておらず、感情の盛り上がりにもリンクしてない、脚本の失敗だと思います。まあ、お互いをよく知った姉妹だからこそこれで通じている、と好意的に解釈すべきか。
 あとは夕子さんが「~助かろうとは思わないわ」と言い放つのを聞いた紫子の表情が変わる描写がビンタの直前の一瞬にほしい。声はいいので画面上の感情表現ですね。
 その後のやりとりも何かしっくり来ない。「自分を大切にして」という妹に「見損なわないで!」「一人だけ逃げるなんてできない!」と。これは姉妹だから言葉が少ないとかじゃなく、明らかに食い違ってますよね。一人で逃げるなんて誰も言ってないし。まあ、ビンタ自体は妹にやられたから姉としてやり返したということでいいのかもしれないけど(?)。
 以上の限界はありますが、その範囲内において、視点固定のため画面上に全く顔が見えない夕子さんを原由実さんが好演してカバーしていると思います。

リアクション (Reaction): 90

 ここでは過去に起きたことを貞一が追体験しているだけなので、彼の存在はその場にいる二人には全く認識されていないし、出来事に影響を与えることもない。ただ、貞一の身体感覚が夕子さんと一致しているのを表現するため、そこに貞一の姿があるような描写がときどき入る。これが実に効果的で、夕子さんがビンタされた瞬間、その痛みを共有する貞一の意識のリアクションが描写される。姉妹対決でありながら男子のリアクションも見られる、という一粒で二度おいしい実に卓抜なアイディアです。貞一くんは夕子さん同様に不意を突かれ、しかも相手から認識されていないので意識がダダ漏れ状態になっており素の反応がそのまま出ている。つまり実に痛そう(笑。ナイスリアクションです。
 厳密には同時に夕子さんのリアクションもあってそちらは薄くなっているが、彼女は怯まずすぐに反撃しているので流れとしては不自然ではない。
 紫子のリアクションは、言い終わる瞬間を狙い打たれ頬を押さえて放心(瞳が揺れる)、夕子さんの言葉に一瞬、口惜しそうに目を伏せてから風呂を飛び出して行く。こちらも一連の流れが丁寧に描かれており高評価です。
 最後に赤くなった手のひらを見ながら「どうしてわからないの……」と呟くシーンも、貞一くんの意識から夕子さんの視点へと繋いで、右手に残った感触が伝わってくるようないい余韻になっています。

破局度 (Catastrophe): 45

 風呂から上がってすぐ後と思われる次のシーンで、夕子さんは紫子の部屋を訪ねて普通に話しかけ、紫子も最初の一言二言の受け答えこそやや無愛想だが、すぐに普通のやりとりに戻って最後は笑顔も見せている。ビンタが飛び交う修羅場を演じたばかりだというのに軋轢がなさすぎる気がします。これは逆に、この姉妹はふだんから喧嘩慣れしていて、しかも手が出るのも日常茶飯事だったのではないか? という疑いが生じてくる。だとすれば口論でさほど感情が昂ぶっているように見えないのにすぐにポンポン手が出るのも納得がいきます。慣れてるので全く後を引かないことも。
 実はこれに先立つ第9話で、夕子さんが、校門前で貞一とイチャイチャしているのにツッコミを入れた霧江の顔をいきなり叩くシーンがあります(ちなみに左手でバックハンドの裏ビンタ)。これは「夕子さんに負の感情が戻った」ことを表現する描写ですが、つまりもともとは手の早い性格だったとも受け取れます。しかも、相手の霧江は紫子の孫であり、容姿もソックリ。半ば無意識に、生前に紫子にしていたように軽く手が出た、とも解釈できるでしょう。かなりの深読みですが(笑。
 というわけで「もともと手が早い姉妹だった」に一票。

『謎の彼女X』 第8話 卜部美琴

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
『謎の彼女X』 第8話 卜部美琴 『謎の彼女X』 第8話 卜部美琴 『謎の彼女X』 第8話 卜部美琴

作品データ

TVアニメ『謎の彼女X』(2012年)
http://www.starchild.co.jp/special/nazokano_x/
第8話『謎の感覚』
原作: 植芝理一(講談社「月刊アフタヌーン」連載)
監督: 渡辺歩
脚本: 赤尾でこ
絵コンテ: 渡辺歩
演出: 所俊克
作画監督: 磯野智

概要

 高校一年生の主人公、椿くんは、放課後の教室で寝ていたクラスメートの女の子、卜部の涎を舐めたのが縁(?)で、彼女とつき合うことになる。
 少年にとって女の子とは謎多き存在であるというのがテーマで、ヒロインの卜部は口数少なく無表情、というか髪で顔が隠れて表情が見えず、それでいて身のこなしや特技のハサミ捌きなど異常に高い身体能力を持ち、さらに涎に関する特異体質(?)と、まさに謎だらけの存在。
 相手の涎を舐めるとその時の感情、頭の中でイメージした映像などが涎を通じて伝わってしまい、場合によっては身体の同じ場所に傷ができるなど体調に影響があったりする、それが椿と卜部、二人の間の「絆」です。そのため二人は毎日一緒に下校して、別れる前に卜部が指につけた涎を椿くんが舐めるのが「日課」になっている。

 夢の中で卜部の胸を触った椿くんは起きてもその手の感触が頭から離れず、煩悩を振り払うために外出。知らずに通りかかった卜部の自宅前でバッタリ逢い、部屋に上がることに。私服の黒い縦セーターで胸が強調された卜部を見た椿くんは挙動不審になり問い詰められて「胸を触った夢を見た」と白状してしまう(笑。「その感触ってどんなだったの?」と訊かれて「柔らかくって、弾力性があって……」と説明する椿くん。どんなプレイだよ。卜部は自分の胸を触りながら涎を舐めさせて感触を疑似体験(?)させる。思わず涙を流す椿くんに、「何も泣かなくてもいいと思う……」 珍しく呆れたような台詞を、例によって淡々と口にするレアなシーンです。
 しかし涙に思うところあったのか、卜部は「もしあなたが望むなら、直接自分の手で触ってもいいわ」と爆弾発言。「でもこういうことはお互いの気持ちが大切っていうか……!」などと大パニックする椿に、曖昧なことを嫌う卜部は「三つ数える間に触らなかったら、今の話はナシにするわ! 一、二、……」「ごめん卜部!」 切羽詰まった椿くんは勢いで卜部の胸にタッチ。さらに思いあまって卜部を押し倒して耳を舐めるという大暴走っぷり。さすがの卜部も動揺を隠せず、ハサミを拾って反撃しようとするも手が届かないという、全編屈指の緊迫シーンです。
 しかし卜部の流す涙を見て我に返って愕然とした椿くんは平謝り。「別に怒ってないわ」という言葉も耳に入らない様子で放心状態のまま帰るのでした。

 翌日学校で気まずい椿くんは、帰りにいつもの日課をこなそうとする卜部を遮り、「今の俺に卜部の涎を舐める資格はないよ……だから、日課をする前に、俺を殴れ!」とリクエスト。

評価

衝撃度 (Impact): 60

 「別に怒ってないわ」と繰り返す卜部だが、「お前が怒ってるかどうかは問題じゃないんだ、俺が彼氏として自分の彼女を泣かせたことが問題なんだ!」という走れメロス的な説明。卜部を押し倒したこと自体もそうですがこの回の椿くんはむしろ意外に男らしいところを見せます。
 卜部は「わたしのビンタ、かなり痛いよ?」と警告。彼女の性格と身体能力からしてこれは言葉通りの意味だし、力を抜くつもりもないという宣言です。また、気に入らないことは「ダメよ」と取りつく島もない彼女が言われた通りにするのは、椿くんの言い分にそれなりに納得するものがあったのでしょう。
 そんなわけで、その場で右手をゆっくりと上げてそのままフルスイングする卜部でした。

表現力 (Expression): 90

 あえて卜部に椿が被る構図で右手を上げる→肘をしならせてスイングするところを正面バストショット→ヒットする瞬間は卜部の後ろから→のけ反る椿くんのアップ→再び卜部バストショット、とオーソドックスなカット割りで、かつ全ての段階を省略せずたっぷりと描いています。ヒットのタイミングで卜部の息が漏れる声、そして威力を感じさせる打撃音も文句なし。
 強いていえば、本当に全力なら一歩踏み込んで腰の回転も利かせて打つところを、ほぼ肩から先の力だけで叩いているように見えるのが卜部なりの加減というところでしょうか。

感情度 (Emotion): 10

 本人の言う通り、卜部に怒りはない。むしろ感情を見せていないのがミソですね。

リアクション (Reaction): 75

 「あなたが昨日のことで痛みを受けるなら、私も同じ痛みを受けないといけないわ」と、椿の涎を舐める卜部。椿と同様に腫れ上がった頬を押さえる。自分のビンタのダメージを自分で受けてリアクションという、この作品ならではのシーンです。
 いつも椿に対しては切り口上、断定口調の卜部が独り言のように「我ながら、自分のビンタは痛いな……」と呟くのもポイントが高い。

破局度 (Catastrophe): 30

 丘と卜部の会話にあるように、「恋愛すると自分の感覚が変わる」というのがこのエピソードのテーマですが、それを生理的な反応として描くのがこの作品。耳を触ると涙が出る、というのが、椿くんが変えた卜部の「新しい感覚」です。
 胸を触っていいと言った自分にも責任はあると言う卜部に、椿くんは今涎を舐めるのはやめてほしかった、と、卜部の頬に手を当てて、「俺の好きな卜部の顔にアザができるのは絶対に嫌だな……」
 その言葉に照れた卜部は俯いて顔を隠したまま日課を済ませて走り去るのでした。貴重なデレ。

『つり球』 #07 宇佐美夏樹

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
『つり球』 #07 宇佐美夏樹

作品データ

TVアニメ『つり球』(2012年)
http://www.tsuritama.com/
第7話『切なくてカウントダウン』
監督: 中村健治
脚本: 大野敏哉
絵コンテ: 堀之内 元、木村延景
演出: 柳屋圭宏、矢野孝典
作画監督: 須藤智子

概要

 テンパると般若のような顔になるのでキレたと誤解される主人公のユキ、彼の家に居候する宇宙人のハル、地元では「釣り王子」として有名な夏樹、そして宇宙人を監視する組織"DUCK"の構成員であるインド人(?)のアキラ、この4人が釣りをしたり世界を救ったりする話、になるらしい。
 学校では無愛想で気難しい夏樹だが、妹のさくらには甘い。二人は母親を最近(「まだ二年もたっていない」)亡くしており、父親の保が経営する食堂で働く真理子といい仲になっているのが夏樹は気に入らない。父親と兄の関係が拗れつつあるのを健気に取りもとうとする妹のさくらは『巨人の星』でいうところの明子姉ちゃんのような役回りになる。小学生だけど。
 メインが高校生4人なのだから、普通に考えるとメインヒロインは同級生の(しかも巫女)えり香のはずなのだが彼女は異常に影が薄く、出番の多さからいうと完全にさくらがメインである。小学生だけど。またはユキの祖母、ケイト。婆ちゃんだけど。声は平野文。閑話休題。
 さくらは夏樹の誕生日祝いに、釣り船を出して家族で海上パーティーを企画。プレゼントに手作りのブレスレットを、色違いで家族全員分用意する。楽しまない様子の夏樹だが、さくらの手前パーティーには参加して父親とのツーショット記念写真撮影にも応じる。しかし父親の祝いの言葉から口論に。そこへ宇宙人に操られた船(!)が衝突コースで向かってくる。大きく舵を切って衝突は避けたものの、船から投げ出されかけたさくらは母親の分のオレンジの腕輪を海に落としてしまうのだった。

 本筋とは直接関係ない宇佐美家のドラマですがここまでずっと丁寧に描かれています。一般的には父親の再婚を嫌がるのはまだ小学生の娘であるさくらのほうと考えられますが、彼女は真理子を家族として受け入れていることを態度で表明している。それで父親の保としては却って息子の夏樹に対してバツが悪いのかもしれない。夏樹は自分だけ(真理子を加えた)新しい家族の蚊帳の外にされていると感じている。男の子のほうが母親を引きずっているのも自然かもしれない。保は彼なりに息子を自慢に思っていることを伝えようと「こいつはバスプロを目指している」と言うが、夏樹は「江ノ島にいてなれるはずないだろ」、「だったら江ノ島出ろ!」「店はどうするんだよ」「お前は継がなくていい、カフェに改装する案をみんなで考えている」「そんな大事なことなんで相談しないんだよ!」というやりとりになる。
 これも一昔前なら逆に、家業を継がせたい親と継ぎたくない子という形になるところですが、息子に好きなことをやらせたい父親と、家族から疎外されていると感じる息子の、まあよくある父子の行き違いです。
 さくらが「家族全員分」として作った腕輪は五つ。亡くなった母親と、真理子を含めた五人が彼女にとっての家族全員です。そのうち、母のオレンジを海に落としたことで決定的なショックを受けるのも意味深い。

評価

衝撃度 (Impact): 85

 ここに至って遂にさくらちゃんがキレるターン。「お兄ちゃんのせいだ! プレゼント渡そうとしたのに! 喧嘩なんかするから!!」最後のアクシデントまで夏樹のせいにするのはほとんど八つ当たりですが、彼女の気持ちを考えると無理もないところです。まだ腕輪の意味がよくわかっていない夏樹は「わかった、お兄ちゃんが作ってやるから」とフォローするも逆効果。「やだ! お兄ちゃんなんかに作ってほしくない!」これには夏樹ショック。「お兄ちゃんのバカ!」と掴みかかるさくらに「いい加減にしろ!」と遂に手が出る。
 さくらちゃんのブチギレっぷりがすでに十分衝撃的ですが、おそらく初めて妹に手を上げたであろう状況、しかも自分の誕生日会で家族友人勢揃いの前で演じる愁嘆場。衝撃度は高いです。

表現力 (Expression): 75

 スピード感はさほどないですがまともに頬に入って腫れが痛々しい。さくらの正面アップで正攻法の演出。残った四つの腕輪が足下にバラバラと落ちる描写も効果的。

感情度 (Emotion): 55

 この直前に父親に対してキレていた夏樹ですが、さくらの逆ギレ(?)に対して若干戸惑っているように見える。「どうしてお父さんと仲良くしないの!? なんでみんなで楽しいのに笑わないの!?」というさくらの正論には少し痛いところを突かれたという感じではあるが、最後の「お兄ちゃんのバカ!」に対して「いい加減にしろ!」という流れがどうも決定打としては弱い気がする。
 夏樹は感情の見えにくいキャラだし、決して冷静ではなかったにしろ、「思わず手が出た」という彼の感情の最後の昂ぶりが見えない。むしろいわば普通に妹を叱ったように見えるんですが、今までの二人の関係からして夏樹が手を上げるようなことがそうそうあったとは思えない、おそらく初めてでしょう。わかりやすくするならもっと夏樹がイライラしながらさくらの言葉を聞いていて、最後に決定的に夏樹を激昂させるような言葉をさくらが言う、そして手が出た直後に夏樹が一瞬後悔した表情を見せる(これはやりすぎか)、という風に演出されるべきではなかったかと。
 「勝手にしろ!」と言って去る様子からして、やはり見た目以上に感情的になっていたということなんでしょうね。
 「さくらちゃんに謝れ!」と言うユキには(この場合は身内が言うより効果的だし)よく言ったと褒めてやりたい。実際さくらがこの日のために準備してきたことをユキはよく知っているわけです。それでも、「お前に何がわかるんだよ、わかるわけねえだろ!」と言ってしまう夏樹の気持ちも個人的にはわかるんだよなあ。これは余談。

リアクション (Reaction): 95

 一瞬放心した後、十分にタメを作ってからギャン泣き。今までずっと大人びた態度で兄や周囲に気を遣ってきたさくらちゃんが初めて年相応の感情表現を見せたのがこれとは、観てるこっちにも堪えます。

破局度 (Catastrophe): 90

 その後グダグダになって解散したと思われますが、夜、さくらが家に帰っていないことが判明したところで引き。家出して行方不明、とこの時点では最大級のカタストロフといえるでしょう。

『ゼロの使い魔F』 第6話 ルイズVSアンリエッタ

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
『ゼロの使い魔F』 第6話 ルイズVSアンリエッタ 『ゼロの使い魔F』 第6話 ルイズVSアンリエッタ 『ゼロの使い魔F』 第6話 ルイズVSアンリエッタ

作品データ

TVアニメ『ゼロの使い魔F』(2012年)
http://www.zero-tsukaima.com/
第6話『波乱の露天風呂』
原作: ヤマグチノボル (MF文庫J刊)
監督: 岩崎良明
脚本: 國澤真理子
絵コンテ: 鈴木洋平
演出: 鈴木洋平
作画監督: 戸田麻衣、長谷川亨雄

概要

 現代日本の高校生・平賀才人は、異世界ハルケギニアに使い魔として召喚される。以後はずっと異世界のみで進行する剣と魔法のファンタジー。そのアニメ化4期目にして最終シリーズ。
 典型的なハーレムものでもあり、さすがにシリーズ4期目ともなると正ヒロインであるルイズと才人は正式に恋人同士になっている。それでも他のヒロイン達は遠慮なく才人に迫り、嫉妬したルイズに爆破されるというオチが繰り返される様式美。
 先の戦闘に対する恩賞でアンリエッタ女王から領地を貰った才人は、名実ともに貴族となって自領へ。前領主の館に移り住むも、地下の隠し部屋を発見、その部屋の姿見が城の国王の寝室の鏡と魔法で繋がっていて(!)アンリエッタ女王と密会する形になります。
 そんなアホな! とツッコミたくなるところですが、この館はもともと妾宅で、先々代の国王であるアンリエッタの祖父が愛人を住まわせ、密会するのに使っていたのだろう、というリアルな話が出てきます。「厳格な王だった祖父にこんな一面があったなんて……」とアンリエッタはむしろ同情的。父親の愛人発覚ならショックかもしれませんが祖父だとまた少し違うということでしょうか。そして祖父同様、自分も不本意な結婚を強いられそうだという話に。「結婚するなとは言って下さらないのですね……」とこぼす女王。重いです! そしてごく自然な流れで才人とキス。しかもルイズにバッチリ目撃されている。
 私見ですが、アンリエッタ女王の迫り方は他のヒロインが才人にちょっかい出すのとは全く違う。重い女。しかもガチの浮気。アンリエッタだけはガチ。必ずしも最終シリーズだからというわけではなく、前もこんなでした。才人も完全に釣り込まれてるし、これはルイズと破局しても仕方ないレベル。ちなみにルイズとアンリエッタは幼馴染みの親友でもあります。
 さらに言えば、一応表向きは偶然ということになっているけど、才人にこの領地を与えたのはアンリエッタなわけだし、隠し部屋で密会するところまで全て計算なのではないか? としか思えない節もある。シエスタも女王が才人付きを命じたメイドらしいので、ルイズとの仲を妨害するための工作ではないのか? 「ときどきでいいのです、こうして会っていただければ」「では、またここで」とか言うてるし。
 すっかり前置きが長くなりましたがここまでが第5話で、第6話はサブタイトルからも分かる通りいわゆる温泉回(笑。ちなみにルイズと才人は一応仲直りしてます。それもなぜかルイズが悩んだ末に才人を許すという流れで描かれて才人はリアクションするだけ。どうも才人の言動は一本調子で、自分のやってることの意味がわかってるのか? と言いたくなる。再び閑話休題。ともかく、ルイズによって封印された隠し部屋との通路を確認しに、何食わぬ顔で訪れるアンリエッタ女王。不審者としてルイズに発見され、裸の付き合いとばかり露天風呂でサシで話をつけることになります。

評価

衝撃度 (Impact): 60

 状況は完全なド修羅場、しかも今まで友人とはいえ主従という節度は終始守ってきたルイズが「このあばずれ!」と叫んで女王陛下にビンタする。どう考えても第一級の衝撃シーンのはずなんですが、実際はどうも迫力に欠ける。しらばっくれるアンリエッタに何もかも知っているぞと詰問するルイズ、開き直る女王、という流れは間違ってないんですが、巨乳VS貧乳という構図になるところからコメディ調になってしまって台無しに。

表現力 (Expression): 65

 振りかぶるところまでルイズの正面から、ヒットの瞬間までを横から、その直後をアンリエッタ正面からのカット。オーソドックスですが大きなアクションが丁寧に描かれています。やや音の迫力とスピード感に欠けるのはルイズの身体能力ゆえか。そこをリアルに描いてもという気はするが(笑。

感情度 (Emotion): 75

 「本気で好きになってしまったから仕方ない」「同じ人を好きになるなんてよくあること」「悪いことはしてませんから!」と全く悪びれず開き直るばかりか、「少しは成長することね」と胸の大きさの差を嘲るアンリエッタ。これはルイズの怒りももっともだ、と言いたいところなのだが、やはり流れが色気に行ってしまったところでルイズの気勢も削がれてしまい、感情のクライマックスとビンタのタイミングがうまく合っていない印象です。

リアクション (Reaction): 60

 よろめいて頬を押さえるも、即座に「やったわねぇ!?」と反撃に移る。女王ナイスガッツです。しかし振り上げた腕を受け止められそのまま掴み合いに移行。惜しむらくはビンタを返してほしかった。ルイズもそこは様式として一発もらうべき。

破局度 (Catastrophe): 40

 結局「子供の時以来」の取っ組み合いで、ここからは完全に、両者力尽きるまでケンカして仲直りというお約束の流れに持って行こうとするのだが、問題が全く何も解決していないのは言うまでもない。アンリエッタは「このご時世、男はいつ戦争で死んでもおかしくない」だから自分に嘘は吐きたくない、とまた微妙に違う話を持ち出してルイズを丸め込みます(笑。 二人は握手して仲直り。それでいいのかルイズ。

『THE IDOLM@STER』 第16話 ハム蔵

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
『THE IDOLM@STER』 第16話 ハム蔵

作品データ

TVアニメ『THE IDOLM@STER』(2011年)
http://www.idolmaster-anime.jp/
第16話『ひとりぼっちの気持ち』
監督: 錦織敦史
脚本: 白根秀樹
絵コンテ: 望月智充
演出: 小竹歩
作画監督: 常盤健太郎、飯飼一幸

概要

 アイドル育成ゲームのアニメ化。
 小ネタですが、擬人化されていない「小動物のビンタ」は他に例がない(笑)と思われるのでサンプルとして。
 TVの動物番組にレポーターとして出演しているアイドル、我那覇響。自分の飼い犬である「いぬ美」と一緒にレギュラー出演していたが、ある日いぬ美とケンカして一人で収録へ。ところがライバルの961プロダクションの陰謀により、収録現場から遠く離れた山道に置き去りにされ崖下に転落。電話もなく連絡もできない。そこでハムスターのハム蔵がいぬ美に助けを求めることを提案するが、ケンカ中だからと意地になった響は拒否。そんな響の肩に上ってビンタを見舞ったハム蔵は涙を浮かべて響を睨み、単身いぬ美を呼びに崖上へ走るのだった。
 擬人化されていないと書きましたが、ハム蔵は(動物と会話できる響と関係なく)完全に独立した人格を持ったキャラクターとして演技しています(笑。
 ちなみにハム蔵の声を演じるのは春香役の中村繪里子。

評価

衝撃度 (Impact): 70

 会話の流れ的には自然だが、まさかハムスターがビンタするとは思うまい(笑。
 しかも、ハム蔵が走り出すところで挿入歌が流れ、しかも雨が降り出すというドラマチックすぎる展開。

表現力 (Expression): 70

 左肩に乗ったハム蔵へ顔を向けようとしたところにカウンター気味に入り、ヒットの瞬間に響が目を瞑っているなど、芸の細かい演出。ハム蔵もハムスターの体型で全身を使ったアクションを見せる。
 ただ、頬を叩く音のタイミングが画と全く合ってないのは残念。ディレイまでかけてるのに(笑。

感情度 (Emotion): 75

 「キーッ!」というような鳴き声を発しているが、翻訳するならさしずめ「響のバカ!!」といったところだろうか。目に涙を浮かべて響を睨み、走り去るアクションで涙が飛び散るという、実にエモーショナルな演出。

リアクション (Reaction): 60

 頬に赤い跡が残り見た目はそれなりに痛そうだが、苦痛の表情はほとんど見せない。唖然としているうちにハム蔵は走り去り、雨の中、一人反省することになる。

破局度 (Catastrophe): 30

 この後ハム蔵とサシのやりとりはないが、迎えに来たペット全員に響が謝って和解。ハム蔵を肩に乗せて現場に駆けつける。
 余談だがここではハム蔵は響の右肩に乗ってるので、右と左で何か意味を持たせているのかと思ったが、意外と肩に乗るシーンはあまりないようで(OPとEDにはない)確認できなかった。

『花咲くいろは』 第1話 四十万スイ

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
『花咲くいろは』 第1話 四十万スイ 『花咲くいろは』 第1話 四十万スイ 『花咲くいろは』 第1話 四十万スイ

作品データ

TVアニメ『花咲くいろは』(2011年)
http://www.hanasakuiroha.jp/
第1話 『十六歳、春、まだつぼみ』
監督: 安藤真裕
脚本: 岡田麿里
絵コンテ: 安藤真裕
演出: 安藤真裕
作画監督: 関口可奈味

概要

 東京の女子高生・緒花は突然、祖母の経営する金沢の老舗旅館で住み込みの仲居として働くことになる。という話。
 同じく住み込みで板前修業中の民子と相部屋になるが、彼女の植えた食用のノビルを雑草と間違えて抜く、厨房の指導に口出しするなど善意の行動が裏目に出た形で民子にすっかり嫌われる。
 それでも短い睡眠時間で修行に精を出す民子に、緒花は少しでも疲れが取れるようにと気を利かせて陽の当たる窓に布団を干すが、下の階のお客に布団を落としてしまいまたも裏目。事情を聞いた女将は民子を呼び出し、彼女の身の回りの不始末が原因だとしてビンタ。
 悪いのは自分なのに理不尽だと食ってかかる緒花に女将は、お客にとっては理不尽どころではないと諭す。反省する緒花だが、「あたしも叩いて下さい!」とリクエスト。自分のせいで頑張ってる人が叩かれるなんて嫌だという言い分に、女将は無言でビンタ三発をくれるのでした。

評価

衝撃度 (Impact): 80

 民子を目の前に呼んだ女将は、無言で煙管の灰を落として、静かに置き、目線を切ったままバックハンドでビンタ。かなりの高等技術である。その瞬間まで予測不可能という意味では衝撃度は高い。
 今のご時世ほとんど見られなくなった(?)、体罰としてのビンタ。厨房での言葉がすぎる説教といい、この旅館では昔ながらの厳しい指導方針が残っていて、東京育ちの緒花と文化衝突を起こすわけです。とはいえ本編で女将のビンタが飛ぶのはここだけ。民子に隙があったのは事実として、むしろ緒花への一拶の意味と捉えるべきかも。ただ仲居頭の巴のリアクションはそれほど驚いているようではないし、後に若旦那の縁が崇子に手を上げようとした時も「手が早いのは血筋か」と述懐しているので、女将ビンタは必ずしも珍しくはないのかもしれない。閑話休題。
 さらに緒花が自らビンタを要求するという意外な展開に、また無言で三発というのも凄い。お婆ちゃんのビンタという意味でもレアでしょう。ちなみに女将は68歳。

表現力 (Expression): 80

 煙管を置く所作からワンカットで次の瞬間手が飛ぶ様はまさに静から動。目線を向けないままの高等技術で、上体を吹っ飛ばし頬に跡が残る威力も十分。
 緒花へのビンタは二人とも立った状態で、緒花の言葉に一瞬、目を伏せて考えるそぶりを見せてから、おそらく振り向きざまに、間を取って三発。女将の袖が翻るのを、あえて激しくブレるカメラワークで一迅の風のような効果をつけ、その瞬間は見せずに緒花のよろめく足、揺れる後ろ髪のカットでつないで音で表現。こちらは両頬が腫れ上がるほどのダメージ。ちなみに鼻血を出しているのは「興奮すると鼻血が出やすい体質」という伏線が入っており、精神的な原因と考えられる。あくまで打撃は綺麗に頬に入った、と。
 二度にわたる衝撃の瞬間をうまく描き分け、画も工夫された良シーン。

感情度 (Emotion): 55

 女将はあくまで感情を交えず、民子に対する業務上の指導の一環としてビンタ。その後の緒花へのビンタは、本人の希望によるものであり、三発という数も含めて何らかの思いを込めたとも想像できます。

リアクション (Reaction): 75

 民子の、正座から脚を横に崩し頬を押さえて項垂れる様子はまさに「耐える女」の図で、「すみません」とひたすら反省の意。
 緒花は自分で言い出した手前もあり、目を潤ませながらも「ありがとうございましたぁっ!」と意地を見せる。
 これも好対照です。

破局度 (Catastrophe): 50

 民子は、女将の処置そのものには完全に納得しておりそこは問題なし。緒花は、女将の言葉に感じるところはあったものの、やはり意見の違いはある、という両者の関係がここで決まる。緒花の要求通りビンタした女将も、意外とガッツのある孫、と評価を改めた面もあるのではないか。この時点ではわからないが、母として娘として二人の間に入る皐月の存在も併せて考えると趣深い。
 むしろこのあと民子と緒花の間がますますこじれるのだが、それは別問題であり対象外。